journal in japan

記憶の中の詩

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2007-03-29 [ Thu ]
企業ミュージアムへふらりと寄った。
今日はこれだけが楽しみで、打合わせに出かけてきたのだ。
今では迷子になりそうなインテリジェント・ビルだが、
近代の黎明期の敷地を再現した模型は、
もっと素朴で人間味に溢れている。
初期の製品復元モデルも。
ヨーロッパの認識は11世紀から始まる私は知らず知らず
古いものも現代から振り返る、あるいは見下ろすのでなく、
その時代、その場に身をおいた、鳥瞰ならぬ蛙瞰的な見方が
習い性になっている。
時系列順に並んだ展示物に、それぞれの時代の人たちは
どんな驚嘆の眼をし、好奇心に胸を躍らせたのだろうと
思いを馳せてみる。
そして図面を引き、計算と実験を繰りかえし、
あるいは mm 単位の手仕事に神経をこめ、
できあがっていく構造物やプラントを見上げた人たちの野心と誇りに。
そういう感情移入も対象が空間的に広がり、
成層圏を突き抜けまでしてしまうと
まさしく無重力状態に手がかり足がかりを失って
心もとなく浮遊してみるのだけれど。

好奇心---そう、中世ヨーロッパのキリスト教道徳では
これはりっぱな悪徳のひとつ。
ケンタウロスの星のもとに生まれたせいか
何ごとも「食わず嫌い」は人生の大きな損失だと、
好奇心こそが生命力の源だと思っている私は、
世が世ならば地獄送り第1便の隅っこに
きっと押しこめられていたはず。
だからこそ技術翻訳でどんな仕事がきても
辛いと思ったとしても楽しんでこなしてこられたのだけれど、
(そして好奇心はまた、通訳にとって大切な資質のひとつでもあるのだと
どの師も繰りかえしのたまい給う・笑)
ふだん眼に触れるのは図面や、決して画質のよくない写真ばかり。
模型や実物の一部とはいえ、
3次元の広がりと感触をもって目の前にさし出されたものに
子供のようにしゃがみこんで見入ってしまう。

そして後頭部には、くだんのマルナゲ案件が自己主張を始めている。
解説の文章。
模型の提示。
企業宣伝がいちばんの目的とはいえ一般啓蒙的であるべき展示は、
これでいいのか。
技術には素人だからこその素朴な疑問と
啓蒙的プレゼンタとして、自戒をこめた批判精神と欲求不満が混じる。
仕事は忘れたいと思いながら、日英バイリンガル版のパンフレットを
もらってきたのは、これで翻訳の訳語集をふくらまそうという
下心からだ(アーヤダヤダ
ナレーション付の映像資料を見たとき黙っていられなくなって、
感想アンケートに
「専門知識のない素人にはわかりにくいところがある!」と
つい書いてしまう。はい。自省も大いにこめて。
それでも途中で出てきたのは閉館時間になったからで、
続きはまた絶対見る!!と決めている。
これを励みにまた次回出向きます♫

回り道をして、湾岸をめぐって帰ることにする。
ぼってりした夕陽が西の空に、ビルの間に懸かっている。
進行方向を向いて座ると、両側に海と空が広がる。
21世紀のビル群と、20世紀の艀と。
そう・・・ミュージアムの展示物はほんとうは、
クライアントから依頼された私の仕事には直接なんの関係もない。
でも広い空をちゃんと見ておかないと、
私は窓から雲の断片を見るだけでは翼がかじかんでしまう。
海がどこまでも大きいことを思い出せなければ
ただ舫われているだけでは、この小舟はいつのまにか浸水してしまう。
 <まさしく私は「ふね」ですから <サザエ母ちゃう(笑
日が暮れるにしたがってぼんやりぼやけていく思考に凭れたまま、
ここの技術者たちが関わった乗りものに乗って、
ここの技術者たちが関わった巨大建造物を眺めながら
古いターミナルへ向かう。
同じビル群の林立とはいっても、
新しい埋立地の未来都市とは違い、
元祖ウォーター・フロントのそれはたしかに昭和の名残を残して
「東京へ戻ってきた」と思わせる。


ぁー草臥れたくたぶれた。
でも楽しかった。
なにがってそれぁ、ミュージアムと湾岸めぐり♬
今日は風が強かった。
打合わせの前外のベンチでコーヒー喫んでいたら、
革(羊だけど)のコートが飛びました <クライアント担当者大ウケ
海風とビル風でふだんからこんなものかと思ったら、
今日は特にびゅんびゅんだったらしい。
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2007-03-28 [ Wed ]
都心朝イチの用事をすませたあと、
あまりの好天にまっすぐ帰りたくなかった
&仕事資料を1セット抱えて出てきていたので、
ちょうどいい場所を見つけて座りこむ。
場所さえあればどこでも仕事ができるように
自分をしこんできてはいるけれど、
その条件が「静かで・日当たりと風通しがよくて・
(できれば)飲食自由で・煙草の煙が気にならなくて」
というと、けっこうなかなかないもの。
今日はラッキーだった。
吹抜の天井は高くて外光が心地よく入ってきたし、
それっくらいだと人のざわめきも紫煙も、うまく上へ抜けてくれる。
周りにいるいろんな人たちも、気分転換の人間ウォッチの好対象。
帰宅ラッシュが始まる前に一段落ついた。

時間的に優先順位の高いこの仕事に集中できる前に、
昨日しょいこまされた(ことが判明した)案件のことが
頭にしつこく貼りついていた。
だってそういうの、日本語では「マルナゲ」っていいますのよ。
・・・って、相手も日本人か(爆
他の仕事をしたり、息抜きにショップをぶらついたり
自分の「抽斗」の奥にしまいこんでいたあれこれを思い出していたら
それなりアイディアが浮かんできたので、
まぁなんとかします。

それにしても。
週明け、いつもよりなぜだか重荷だと感じた案件を不本意なまま納品、
翌日に備えてゆっくりお風呂に入ったら、
いきなり肌がぷりぷり(本人比)になったのに苦笑。
そんなにストレスだったんだ、あの仕事。
いちばん強力なヘァ・トリートメントを使い、
グラニュー糖に精油とマッサージ・オイルのオリジナル・ブレンドで
角質マッサージしたので、 <ひじ、ひざ、かかと、足裏
翌日のパワー・ミーティングはそこそこ見ばよく元気(本人比)だった。
帰りに新しいスーツ購入。
閉店20分前に飛びこんで、1点ものがいきなり試着でフィットしてくれたのが
何よりラッキー。
スーツってのが哀しくなくもないけれど、
薄手ウールの生地がイタリア製だというあたり、自分へのご褒美と思おう。
フィット性の高いデザインで、微妙なカットも気に入った。
半年前はもちょっとスマートだったのに・・・って、
あれはむしろ痩せさらばえていたので論外。
あと5kgか5cmか5歳減ったら、
スーツじゃなくってもっと楽しいお買いものします☆
さて、こいつのデビューにはどの靴&スカーフ&ルージュを
合わせようか・・・(悩
2007-03-21 [ Wed ]
崖の上からは足もとに黒い湖と、
遠景に平野と大河を望んだ。
爪先の下をまっすぐ見下ろし、
振りかえって
「ねぇ、マルガリータの母親はなんて名前だった?」と訊いた。
返事がないのでまた断崖に両手を広げた。
「ローレライみたいだ」
背後から声。
「マルガリータの母親は、こんなところから落ちたんだった?」
あとに遺されたエーデルワイスの花冠。

 彼女を手もとに引きとった大尉は、
 心を閉ざした彼女を、ただ黙って傍において守りつづけた。
 やがて彼女は笑うようになり、娘が生まれた。
 しかし山歩きの最中、子犬をかばおうとして
 妻は谷底へ落ちた。
 声ひとつたてず。
 大尉はただ白い花が背後でゆっくりと舞うのを
 一瞬の幻のようにおぼえただけだった。
 白いドレスにふんわりと受けとめられて
 子犬は無傷でくんくん鳴いていた。
 その日から無頼者の大尉は人間が変わった。
 エーデルワイスの花冠は大切に家に置かれ、
 マルガリータにとっては唯一母の形見となった。

崖の上で撮られたスナップ・ショットでは
たしかに白いシャツと長いスカートの女が
陽ざしと汗に火照った笑顔をみせている。

背中から見守ってくれる眼があれば
行く手を導いてくれる肩があれば
同じほうを向かって歩いてゆけた。

そして
このローレ・ライは
あるとき虚空をつかもうとして奈落へと足を滑らせたのだった---

(freie composition nach Fr.Frhr.v.H. und A.S.)
2007-03-20 [ Tue ]

えどのやしろにさくらさく

2007-03-19 [ Mon ]
朝イチの用事を終えてUバーンの駅まできたら、
とんでもない突風が吹きつけてきた。
Uバーンの出入り口からではなく、これはたぶん・・・
東京湾から陸地に向かって吹く風。
だだっ広いメィン・ストリートを奔流のように駆けぬけていった。
残念ながらメアリー・ポピンズではないので、
慌ててビルのわずかなくぼみに避難する。
ぃゃ、この際ドロシーよろしくあれぇ~~~と飛ばされるのでもいいから
風に乗っていたら、次の目的地に一瞬で着けたのかも(違

冗談はさておいて、Uバーンで移動。
次の用事の前に座って静かに書きものができる場所がほしかったが、
探した場所が悪かった。
やっと見つけたと思ったら、頭の上をSバーンがガンガン通過していく。
一見静かでおしゃれなカフェテリアなのに、
まるで有楽町~新橋のガード下だ(笑
でも腰を下ろしたら気が抜けて長々座りこんでしまい、
ぼんやりしていたので電車の騒音もほとんど聞こえなかったらしい(照

建設中の未来都市然とした最初の目的地とうって変わって、
次の目的地は古い東京の街。
冬と春、山の手と下町・・・が心地よく混ざりあっているのを楽しみつつ
路地を抜けて---はい、野暮な別件もちゃんとすませました。
ぽかぽか暖かかったので嬉しくなってしまい、
当初の予定を変更して、トラムに乗って帰ることにする。
窓から手をのばしたら民家の軒先に触れられそうだったり
坂を隔てた反対側に赤煉瓦の塀が延々続いていたり、
チンチンと鐘を鳴らしながらごとごと走っていく。
 <2番めの目的地に着いたときこのチンチンゴトゴトが聞こえたのも、
  計画変更の動機でした(素

トラムを降りたのはもうひとつの古い、山の手と下町のはざまの街。
慣れない方向から行ったのでどう歩こうか迷ったが、
辛夷の並木が導いてくれた。
いつものコロッケを買っていこうとしたら
おやじさんが歯切れのいいだみ声で
今から火を入れるところだと <14時半に(笑
でも他にひっかかったりはまったりするスポットにはこと欠かない。
いちおうさっきの街とこっちの街とふらふら歩きながら、
電話で先日の同僚とプロジェクトの打合わせもちゃんとした。
ほどなく、彼の上司、というかこのチームのボスからも着電。
携帯って便利なのか、不便なのか。きっと便利。
トラム沿いとここのメィン・ストリートをみるかぎり
梅と桃、辛夷は咲いているけれど
桜はまだ、緑色の蕾をいっぱいにふくらませた間から
思わせぶりなピンクをちょっぴりのぞかせているだけだ。
商店街の人たちが丹精しているのだろう、
紅白の梅が1本の樹にまじり咲く、
名前は知らない交配種を何本か見かけた。
UバーンとSバーンを乗りついで帰宅。
ぽかぽか陽にあたっててくてく歩いてぱくぱく食べたので、
陽なたの匂いをさせたまましばし微睡んでしまった(照
2007-03-17 [ Sat ]
如月10日は、たしか東京で最も遅い初雪記録を更新した日だった。
その日朝は冷えこんだがだんだん気温は上がってきて、
昼間はぬるい雨がしぼしぼと霧のように、頬や髪にまつわりついた。
ある庭の紅梅はとうに開ききり、かすかな雨と風にも花びらを散らせ、
足もとの池を紅く染めていた。
そこから、饐えたような匂いがたち昇っていた。

その光景を無韻詩に描きたくて日記にタイム・スタンプを押した。
それからまもなく、ひと息つけるようになった・・・はずだった。
いつもの冬の楽しみで、手は毛糸や刺繍糸やビーズなどのすさびを
ずっと恋しがっていたのに
手から口へと生きる日々の営みは、
両手いっぱいの荷物だった。

ただ言葉が白い灰のようにはらはらと舞う日々のなかでも、
指の間を光や風や
香りや温もりが吹きぬけていく感触を、
ペンやキーに占拠された手はたしかに感じ楽しんでいた。

いきなり凍てつく日が続いた弥生の朝、
メガロポリスのビル街に雪がちらついたという。
それからしばらくして、近所のバス停で見上げた空には
風ともいえぬ風に弄ばれた霧雨の微粒子が
頼りなげにひわひわ漂っていた。
その日はけっきょくマフラーをせずに歩いたが、
くしゃみをしながら眠りについた翌朝、
また雪が降ったらしい。

降りつもった灰の中からまた新しい言葉が立ち上がるよう
明日もくしゃみをしながら起き出そう。

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2007-03

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