journal in japan

記憶の中の詩

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2007-03-21 [ Wed ]
崖の上からは足もとに黒い湖と、
遠景に平野と大河を望んだ。
爪先の下をまっすぐ見下ろし、
振りかえって
「ねぇ、マルガリータの母親はなんて名前だった?」と訊いた。
返事がないのでまた断崖に両手を広げた。
「ローレライみたいだ」
背後から声。
「マルガリータの母親は、こんなところから落ちたんだった?」
あとに遺されたエーデルワイスの花冠。

 彼女を手もとに引きとった大尉は、
 心を閉ざした彼女を、ただ黙って傍において守りつづけた。
 やがて彼女は笑うようになり、娘が生まれた。
 しかし山歩きの最中、子犬をかばおうとして
 妻は谷底へ落ちた。
 声ひとつたてず。
 大尉はただ白い花が背後でゆっくりと舞うのを
 一瞬の幻のようにおぼえただけだった。
 白いドレスにふんわりと受けとめられて
 子犬は無傷でくんくん鳴いていた。
 その日から無頼者の大尉は人間が変わった。
 エーデルワイスの花冠は大切に家に置かれ、
 マルガリータにとっては唯一母の形見となった。

崖の上で撮られたスナップ・ショットでは
たしかに白いシャツと長いスカートの女が
陽ざしと汗に火照った笑顔をみせている。

背中から見守ってくれる眼があれば
行く手を導いてくれる肩があれば
同じほうを向かって歩いてゆけた。

そして
このローレ・ライは
あるとき虚空をつかもうとして奈落へと足を滑らせたのだった---

(freie composition nach Fr.Frhr.v.H. und A.S.)
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